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1980年 秋 日曜日 早朝 山間の村 無人駅待合室 ベンチシートにたたずむ女。 かたわらに大きなボストンバック。 「んふっ、まだ…かなぁ…」 無邪気な笑み、 「……」 しかし、時折、不安が顔を出す。 女は、そんな悦びと不安の入り混ざった複雑な表情で待合室のベンチに座っていた。 そして、ひたすら誰かを待ちつづけていた。 その女は志保といった。 1980年 春 月曜日 朝 いつもの日常 朝食を簡単にすませ、せわしなく朝の支度をする志保。 「さぁ、出掛けなきゃ」 一言いうや辺りを見回し部屋を出る。 職場に向かういつもの日常だ。 志保はA銀行に勤めている。 高校を卒業後、銀行に就職し15年余りが過ぎていた。 職場ではベテラン、 優しい性格と面倒見の良さで後輩行員には親われ、 上司には真面目で精確な仕事ぶりから、全幅の信頼を受けて、 今は現金の入出金を取り仕切る出納係として働いていた。 だが、そんな志保の日常は、決して満たされていたわけではなかった。 あの日までは…… |
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